「工事長」から「現場代理人」へ
首都圏においてNTT様の固定電話工事を担当するNTT事業本部アクセスシステム部では、グループ戦略の「グループイノベーション2010」を推進する日本コムシスの構造改革運動「革新2010」の取り組みの一環として、「"一人称"で安全・品質の責務を果たせる新施工体制」の確立を目指し、約3年間にわたり、抜本的な改革を行ってきました。
これまでにもワークフローの標準化やIT装備化(業務システムのIT化)など、工事品質の向上と業務の効率化に関わる諸施策を実施してきましたが、2010年は「下請け重層構造の解消」や「事業所制の導入」など、ハードルが高いとされた施策にもあえて取り組み、建設業法の精神に則った「元請責任」を果たす新しい施工体制の「枠組みづくり」の総仕上げを行いました。
新たに誕生した2つの事業所
4つのTS※を集約した世田谷事業所。かつては同エリアに4つのTSがあり、世田谷TSだけで300名の要員を擁していましたが、4TSで重複していた業務を集約し、現在は社員100名と現場200名の300名体制で運営しています。同じく4TSを集約した上野事業所では、社員30名、協力会社管理要員として85名、現場230名で運営しています。「二層化や組織をスリム化したことで、むしろ意思の疎通が図りやすくなり、仕事がやりやすくなった」。「苦しみはあったが、一番良いやり方を皆で模索し、それをスタンダード化することで工事品質は向上した」と、それぞれの所長が口を揃えます。
※TS(テクノステーション):ネットワーク構築データセンタ構築など情報通信に関わる工事を行うコムシスグループの工事事務所
「二層化」~元請責任による「重層構造の解消」へ向けた取り組み
「元請責任」とは、発注主から請け負った工事を、定められた期日までに発注者の注文通りに完成することにほかなりませんが、結果的に注文通りの仕事ができれば良いのではなく、そのプロセスにおける責任も当然問われることになります。そうした中でこれまで建設業界全体の課題となってきたのが、「重層構造の解消」です。重層構造は、元請け業者からすると、現場で働いている方たちの顔(仕事ぶり)が見えにくい構造であり、施工責任があいまいになることで、手抜工事や労働条件の悪化につながることもあります。アクセスシステム部では2010年4月より、首都圏における施工体制をすべて、一次協力会社(連結子会社を含む)との直接契約のみの「二層化」とすることとし、これにともなう連結子会社の統合を行いました。
建設業法における「法の精神」への原点回帰
アクセスシステム部で副部長を務める熊谷仁は、「これまで、元請責任で当社の現場代理人が工事マネジメントを行い、連結子会社が施工管理業務を担当していました。今回の改革はお客様や社会の信頼を高め、当社の社会的責任を果たすため、競争が激化する通信建設業界において効率化と工事品質を確実に担保できる体制を確立することが目的です」と、語ります。
これは適正な契約のもと適正な施工体制を確保して発注者を保護するという、建設業法における「法の精神」への原点回帰とも言えますが、今回の改革では、資質の向上という側面へのアプローチも行っています。
「施工管理業務についても当社が担当し、当社が直接、協力会社をマネジメントする体制とする一方で、連結子会社には日本コムシスグループの一員として技術スキルを蓄積・継承していくことを最大のミッションに掲げてもらうことにしました」(熊谷)。
こうした改革の一環として、連結子会社の中でも優秀なスキルを持つ社員を日本コムシスの社員に迎える人事制度も2009年6月よりスタートしています。
サ総工事契約エリアの再編と「事業所制」の導入
「重層構造の解消」を含む施工体制の抜本的な構造改革のプランニングは4年ほど前から始まったものですが、この新施工体制への転換を後押しする形になったのが、NTT東日本様によるサ総(サービス総合工事)エリア再編の取り組みでした。2010年10月より、108ブロックに分かれている東日本のサ総工事契約エリアを60ブロックに集約することを決定されたため、これによって工事エリアが広域化すると従来の体制のままでは、施工に関わる一切の責任を問われる1現場代理人の管理責任の限界を超えてしまうのではないかという懸念が生じます。
アクセスシステム部ではNTT東日本様のこうした方針変更に先んじて、2009年より「事業所制」の導入を検討してきたことから、これを機に新たなブロックに合わせて、世田谷・上野の2事業所を設置しました。青山・八王子も統合に向けて準備を進めています。「選択と集中」で、要員のスリム化を図ると同時に、所長以下の主管機能も置くことで、組織で動く施工体制の確立を目指すこととしました。事業所に主管機能があれば工事長の仕事ぶりを把握することは容易で、工事長も「工事現場の管理に専念する」ことが可能になります。そうしたことから、事業所制の導入を機に、アクセスシステム部では従来の工事長という呼称を廃止して、「現場代理人」という呼称を使用することとしました。
事業所制導入のメリット1 : 品質と安全の向上〜「本来的な役割」を果たす現場代理人
たとえば世田谷事業所を例にとると、工事全体をコントロールする主管部長たる所長のほか、所長の右腕であり協力会社などの稼働調整なども行う工事部長、安全品質管理部長そして工事管理以外の業務を担当する業務課長など、本社の次長・課長クラスの人材が、従来は現場代理人ひとりの責任のもとで行っていた業務を組織的にサポートする体制となっています。
「したがって、工事管理以外の煩雑な業務から解放される現場代理人は工事をいかに円滑に、品質を高く、事故なく完成させるかという本来的な仕事に集中できることになった」と、世田谷所長の田村耕一は語ります。
事業所制導入のメリット2 : お客様や地域に信頼される地域密着型の組織
田村はまた、「この新しい体制は、毎回本社と連絡を取らなくとも、1つの事業所内でほぼ全て完結できる、いわば一気通貫型の体制。エリアの拠点というものは地域密着型であるべき。工事に限らず、現場でほぼ全ての判断をタイムリーに下すことができる主管機能を持った事業所、"日本コムシスの本隊がそこにいる"という存在感は、お客様に対しても、地域住民や自治体に対しても大きく、安心感や信頼感を持って受け止めていただける」と、この事業所制にはさらなるメリットがあることを指摘します。
事業所制導入のメリット3 : 「コムシスの顔が見えるように・・・」
上野事業所長の杉本則明は、「事業所制」と「二層化」の相乗効果によって新たにもたらされたメリットを指摘します。
「時間的な余裕ができたことと、二層化によって、現場代理人が工事現場に出向いて協力会社の仕事ぶりをみる機会が増え、直接的なコミュニケーションをとる機会も増えた。それによって現場の状況を正確に把握することができ、協力会社の力量も図れるようになった」。
その結果、お客様から「何かお願いや質問がある時に、日本コムシスの現場代理人と話すとすぐにレスポンスしてもらえるようになった」「コムシスの顔が見えるようになった」という良い評価をいただくようになったと言います。
事業所制導入のメリット4 : 「建設業の健全な発達を促進」していく基盤に
また、現場代理人が直接関与することで現場の士気も高まった一方で、協力会社が抱える問題点と強化ポイントについても分かるようになりました。安全・品質の向上に前向きに取り組んでいるような協力会社を育てていくことは非常に大切なことで、こうした会社に対して、通り一辺倒のやり方ではなく、研修機会の提供、必要な工具の貸し出しなど、それぞれのニーズに合ったやり方でバックアップしていくことも必要です。がんばっているパートナーとともにより品質の高い施工を行う。そのバックアップまでをやってこその"元請責任"。そうしたこともしっかりとできる体制ができたのではないかと考えています。



